身体を動かすことほど脳に影響を及ぼすものはない

このフレーズはアンディシュ・ハンセン氏の著書「運動脳」に出てくる言葉です。脳にどんな影響を及ぼすものか知りたい欲求を掻き立てるタイトルです。

初版は2022年ですので既に2年は経過していますが改めてご紹介をしたいと思っています。

 

私たちの脳の大きさって、拳を左右合わせたくらいのサイズが自分の脳の大きさだといわれています。その大きさの脳に中に自分が生まれてからの経験がぎっしりと詰まっているんですね。

 

その脳の中では細胞が絶えず細胞の新陳代謝が行われていて何かをするたびに脳は少しだけ変化しているそうです。例えていうならば固まらない粘土のようなものといいます。

 

以前、脳を鍛えるのはパズルなど脳トレが叫ばれてきましたが、研究の結果、脳を鍛えるには運動が威力を発揮するといいます。

ではどんな運動をすればいいのかを具体的に説明されています

現代人はほとんど原始人と同じ機能しかない

現代の人は原始人と比較して、脳も体も発達したものと根拠もなく思っていませんか。

それはそうですよね、毎日の食べるものを得るために獲物を追って生活していた原始人。

それに引き換え、コンピューターに囲まれスマホでことをなすことができる現代人。

どう考えても現代人は進化していると考えてしまいます。

 

でも実は人間は1万2,000年前からほとんど変わっていないと。

人間の脳は1万2,000年前とさほど変化していない。変わったのは便利で労力をかけずに食べ物を得られる社会になっていることで現代人は原始人よりはるかに動くことが少なくなっていることです。

脳の状態を視覚として認知できMRI(磁気共鳴断層撮影装置)が脳を切り開くことなく脳の状態を知ることができるようになったことです。MRIの実験があります。

2つのグループを調査したものです

被験者は60歳の人たち

①週に数回の頻度でウォーキングを1年間継続したグループ

②週に数回の頻度で心拍数が増えない程度の軽い運動をするグループ

脳の働きを一年後再び調べて比較したところ

①のグループは健康になったばかりでなく、側頭葉と前頭葉、側頭葉と後頭葉の連携が強化されていて「認知機能卯」が向上していた。加齢による悪影響が抑制されていたというのです。

脳は1,000億の細胞がひしめき合い、そして、それぞれの細胞は他の何百万個もの細胞と繋がっている。つながりの総数少なくとも100はあり、宇宙の銀河系やほかに星雲の星の1,000倍以上の数になる。正に頭の中に宇宙があるいてもいい過ぎではないようです。

脳は完成されたものでなく、絶え間なく変化し続ける。今日の脳は昨日の脳と同じではなく、永遠に開発途中の未完成品といえるようです。

ピアノを弾くと脳はどうなるのか

ピアノの銀盤を見る→電気信号が目から視神経へ流れる→後頭葉の一次視覚野→運動皮質から手と指を動かく指令→ピアノを弾くことで音を鳴らす→聴覚皮質を処理→側頭葉と頭頂部の連合野へ信号が伝わる→前頭葉へ伝わる

このようにピアノを弾くことで脳の各部位の働きが連携して曲をスムーズに弾くことができるようになります。

ピアノを弾く最初のころは、脳の信号の流れがぎこちなく情報をすんなり処理できずなかなか上手に弾きことができません。でも練習を重ねるうちに脳の情報がよどみなくつながり強化されることでいちいち考えずに弾けるようになっていきます。

 

このようにみるとすぐれた脳とは細胞がたくさんあることではなく、脳の各領域をしっかりと連携する機能が優れている脳のことをいいます。その連携をスムーズにするために身体を活発に動かせばその連携が強化されるというのです。

 

脳の連携機能が弱いとどんな特性になるか

「カッとなりやすい」「過剰な喫煙をする」「アルコールや薬物への依存が強い」などマイナスの特性をもつことが研究によってわかってきています。

このようなマイナスの特性が脳のせいだと決めつけることはできません、生まれながらにこのような特性を持つわけではありません。このような脳の状態を作り出しているのは生活習慣なのです。あなたの行動の選択そのものが脳の機能を作り上げているのです。

著者のアンデシュ・ハンセン氏はいいます

「脳の可塑性の研究においては、身体を活発に動かすことほどに脳の変えられる、つまり神経回路に変化をもたらすものはない」、この活動は20分~30分ほどで十分といいます。

ランニングによって脳を変えるメカニズムはGABA(ギャバ)と呼ばれるアミノ酸が関係しています。GABAは脳内の活動を抑制し変化を起こらないようにしようとするブレーキの役目をします。そこで運動をするとこのGABAの働きを取り除かれてブレーキを弱めます。これで脳は柔軟になり再編成しやすくなるといいます。

※脳は全体の10%しか使われていないというのは迷信

脳は相当な量のエネルギーを消費します。重さは全体重の2%しかないのに身体が必要とするエネルギーの20%を使っています。要するに脳以外の場所に比較して1キロあたり10倍以上のエネルギーを消費しています。どちらかというと燃費の悪い機能ではあります。それにも関わらず10%しか使っていないは迷信といわざるを得ないといいます。

現代人の脳は常にストレスに襲われている?

人は朝目覚めた瞬間から夜眠りに落ちる時まで終始ストレスに苛まれているといっても言い過ぎではないでしょう。

朝は起きた時からあれしてこれして、昼間までバタバタとして時間を使う。夜は理由もなく湧き上がってくる不安や心配事に脳は飲みこまれていきます。

 

まったくストレスなどないという方は幸せです。

ストレスとはいったい何?

図を見ていただくとわかりやすいが、ストレスを脳が感じるとコルチゾールというホルモンが分泌されて動悸が増えて心拍数があがります。

 

この流れはほんの1秒ほどしかかからず動悸が早くなる。これは身体が厳戒態勢に入ったことと同じで自分の命を守るために闘うか逃げるための準備に入ったということなんです。

 

このようなストレスの対する動きは側頭葉の奥深くにある偏桃体という部分が発しています。この扁桃体は自らが発した指令で身体がストレス反応をし始めるとさらに偏桃体は反応してしまいひどくなるとパニック発作などを起こす場合もあります。

 

ストレスで分泌されるコルチゾールは運動でどうなる?

運動し続けると、身体に負荷をかける行為ですので一種のストレスと同じ状態といえます。つまり運動をし続けるとストレスとなりコルチゾールが分泌されるんです。

そして運動をやめたとき、コルチゾールの量は減ります。この運動を継続して行うことで運動中のコルチゾールの量は増えにくくなり、やめた時は減少する量が増えてくるというのです。

 

さらに定期的に運動することで運動以外のストレスでのコルチゾールは増えにくくなっていきます。これは運動によってストレスに対する反応が鍛えられ、運動を継続することでストレスに対する抵抗力が高くなっていくのです。

ストレス状態に対し脳は抑制しようとする

ストレスにより分泌されるコルチゾールに対して脳は海馬、前頭葉がブレーキの役目を担います。

ストレスが長く続くとパニック発作を起こしてしまいます。そうなると生存が危ぶまれます。そうならないためにストレス反応を抑制するために落ち着かせようとします。

 

その抑制装置の一つが海馬です。海馬は記憶の中枢でもありますが感情の暴走を抑制します。しかし、海馬は長くコルチゾールを浴びていると縮小し物覚えが悪くなることが解明されています。

さらにストレスを抑制する脳の働きに前頭葉があります。前頭葉は衝動を抑えたり理性を失った行動に出ないように働いてくれます。

怖いのは慢性的にストレスが続くとブレーキの役目を担う海馬と前頭葉が萎縮してしまい機能が十分に発揮できなくなるようです。

ストレスによって分泌されるコルチゾール。このコルチゾールの血中濃度が増えると身体の脂肪の燃焼を妨げる作用があって腹部に脂肪が蓄積しやすくなる、その上、食欲が増えて高カロリーのものが食べたくなるという働きがある。

 

だが、運動によってストレスにうまく対処できるようになればコルチゾールの血中濃度は下がりやがて食欲が収まって蓄積された脂肪も減っていく。

運動にはどのような運動がいいのか

有酸素運動

有酸素運動がお勧めだとしています。ランニングや水泳のようなものですね。筋力トレーニングより心拍数が増えるような運動がいいようです。何らかの理由で心拍数を増やせない状態ならばただ散歩に出るだけでもストレスを抑える効果があるといいます

 

この有酸素運動によってBDNF(脳由来神経栄養因子)が生成される。これは大脳皮質や海馬で合成されるタンパク質で脳細胞が他の物質によって傷ついたり死んだりしないように保護してくれる。さらにこのBDNFは新たに生まれた細胞を助け初期段階にある細胞の生存や成長を促す役目も果たしているといいます。

 

まだBDNFの凄いのは脳の細胞間のつながりを強化し学習や記憶力を高める、老化を遅らせる働きです。

BDNFはこのように脳にとって天然肥料といえます。

運動頻度

週に3回で30~40分でインターバルトレーニングがいい。

そして、この運動を継続して続けるということが大事です。

ただ度を過ぎるような運動はプラス面よりもマイナス面が多くなると方向に傾いていくといいます。度を超すような運動はストレスを下げる効果どころかより強くストレスを感じる反応になってしまうといいます。

まとめ

脳の最も優れた仕事は「移動」だったと著者は書いています。移動する生物だけに脳ができたのだといいます。よって身体活動が脳に影響を及ぼすのは当然なのですと。

そう考えれば身体を動かさないと脳はダメージを受けることは想像できませんか。

東アフリカのタンザニアの北部にハッザ族という部族がいて半数近くの人が狩猟生活をしているそうです。彼らは1万年前の祖先と同じ生活をしているとのことです。彼らに歩数計を付けてもらったところ男性で1日に8~10km歩いていて歩数では11,000~14,000歩だったといいます。

人類の歴史を見ると、1日に換算した場合、私たちは午後11時59分40秒で工業化社会が始まったといいます。狩猟生活は午後11時40分までしていたのが人類の歴史です。つまり、つい先ほどまでは狩猟生活をして動きまわっていたんです。

ほんの数秒前からデジタル社会が始まり人間は劇的に動かくなってきています。

高カロリーな食事が簡単に手に入り、動かなくてもなんでも欲しいものが届く時代になってきています。多くの現代人が心や身体を病んでしまう理由は私たちが作り出した便利な社会環境にある、それは矛盾ではあります。

こんな社会だからこそ、身体を動かく運動を日々の中に取り入れて健康を手に入れていきたいと思わざるを得ません。

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